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ワイン用ブドウのすゝめ
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INTERNATIONAL エピローグ
INTERNATIONAL エピローグ 2025年5月下旬 日本特殊情報局(JSIB)の拠点は不明だが、確かに日本国内に存在している。 JSIBは自優守護党の聖和会に通じていて、長きに渡って聖和会から依頼された裏の仕事を請け負ってきた。 そのエージェントの一人、大谷正彦は1984年9月に堂楽園ホテルに入社した。 堂楽園ホテルが開業した年である。 まだ20歳だった大谷は、この時、すでにJSIBのエージェントになっていて、堂楽園ホテルを監視する任務を受けて、正社員として堂楽園ホテルに潜入した。 堂楽園ホテルを監視するというより、実際の任務は、堂楽園ホテルの従業員たちを監視することだった。 堂楽園ホテルが開業する前から、聖和会は日本都市開発クリエイトの社長である竹井剛三と通じていた。 この真っ黒の企業が堂楽園ホテルを開業するには国家権力の協力が必要不可欠だった。 そこでこの真っ黒の企業に協力して便宜を図ったのが聖和会だった。 だが、実質的に裏工作に奮闘して、堂楽園ホテルを開業に導いたのがJSIBだったのである。...

夢見操一
1 日前読了時間: 5分


INTERNATIONAL vol.37
INTERNATIONAL (64) 2025年5月中旬 大谷正彦はガゼボの木製のテーブルに両肘をついた姿勢で坂井琢郎の話を聞いていた。 ずいぶんと長い坂井の回顧話に耳を傾けて、途中で話の腰を折るようなことはしない。 プロの記者として、聞く姿勢を崩さなかった。 「――辻井先生が直々におまえのところへ来たと・・・?」 大谷は予想していなかった結末に驚いている。 「そうなんですよ。何の前触れもなく突然ですからね。さすがにビックリしました」 坂井は苦笑いを浮かべて、 「でも、辻井先生のおかげで今があるんですから、振り返ってみると、やっぱり辻井先生に感謝ですね」と伝えた。 「そうか」 大谷は腕を組んで、「その後のことは?」と訊ねた。 「何もないです。辻井先生の話が最後ですよ」 坂井は正直に答えた。 「えっ・・・」 大谷は少し考えてから、「あのホテルの経営破綻が明るみに出た翌日、おまえ、あのホテルに来ただろ?」と確認した。 「ええ、行きましたよ」坂井が即答した。 「なんで来たの? もう関係のないおまえが何しに来たの?」 大谷の尋問のよう

夢見操一
2 日前読了時間: 7分


INTERNATIONAL vol.36
INTERNATIONAL (63) 1997年10月10日 夜 坂井琢郎は、先にクレジットカードで精算を済ませて、バランタイン30年のロックを味わう辻井元高とグラスワイン(赤)を味わうユキコの様子を覗っていた。 インターナショナル堂楽園ホテルへ戻るからと言って、辻井もユキコも一気に飲み干すようなことはしない。 自分のペースでゆっくりと味わうのが常である。 坂井は、「誰にも見られんようにして、ここから外に出してくれるか」という辻井の要求に応えるために、脱出ルートをイメージして、「今のこの時間帯なら成功させられるはず」と確信していた。 1階ロビーで待機している支配人とシニアマネージャーから、「辻井先生が席を立ったら、すぐにPHSで連絡しろ」と指示されている。 だが、坂井は連絡する気はまったくなかった。 しばらくして、辻井が坂井に合図を送った。 坂井はすぐにテーブル席に近づき、レディーファーストでユキコの椅子を引いた。 ユキコが席を立ち、続いて、坂井は辻井の椅子を引いた。 辻井が立ち上がり、「坂井君。頼むで」と告げた。 「では、

夢見操一
3 日前読了時間: 6分


INTERNATIONAL vol.35
INTERNATIONAL (62) 1997年10月10日 この日は金曜日だが、体育の日という祝日で、さらに大安吉日、縁起の良い日だった。 アルシオ・インターナショナルのバンケットルームでは、フル稼働で結婚披露宴が行われていた。 アルシオ・インターナショナルにとっては、初となる秋のブライダルシーズンを迎えて、バンケット・サービスのスタッフも、バンケット・バーのスタッフも、バンケットの調理スタッフも慌ただしく動き回っていた。 坂井琢郎も朝早くに出社して、バンケット・バーの準備を開始し、後から出社してきたバンケット・バーのスタッフたちに引き継いでデスクへ。結婚披露宴が終了した後、夜に行われる有名企業の式典とパーティーの内容を確認していた。 「300人のビュッフェ、さらにウェルカムドリンクありか・・・」 坂井は、フル稼働で行われている結婚披露宴の対応をしながら夜の準備を平行して行うイメージを描いて、現場に戻って行った。 午前にスタートする結婚披露宴、午後にスタートする結婚披露宴、合わせて8件の結婚披露宴が終了し、大宴会場をリセットして

夢見操一
4 日前読了時間: 6分


INTERNATIONAL vol.34
INTERNATIONAL (57) 1997年4月1日から5月23日のグランドオープンまでの期間、アルシオ・インターナショナルの従業員たちは、研修と開業準備の業務に忙殺されたのだろうか・・・ 坂井琢郎にとって、ホテルの開業準備に携わるのは、アルシオ・インターナショナルで4度目だった。 静岡のホテルと泉佐野のホテルの開業準備は、なんとなく似ていたと思える。 また、神戸のホテルとアルシオ・インターナショナルの開業準備は、プロセスは同じように感じるが、業務の内容と空気感は異次元と言わざるを得ない。 社員研修では「ラテラルサービス」を象徴する助け合いの精神で、アルシオのフィロソフィーを学び会得していくのだが、いざ、現場に戻り、開業準備の業務に移ると、奪い合いが始まり、うかうかしていると落とし穴にはまり、取り残されていくのだ。 「いいか、これは、縄張り争いだ。自分の部署が有利に業務を遂行できるように、全力で戦い、奪い取らなければならない。これが管理職の役目だ」と豪語する上司がいた。 坂井はこの言葉に愕然とした。 社員研修では、部署同士が協力

夢見操一
9月17日読了時間: 8分


INTERNATIONAL vol33
INTERNATIONAL (56) 1997年4月1日 坂井琢郎は晴れてアルシオ・インターナショナルに入社した。 採用が決まった後、坂井琢郎は開業準備室に足を運び、引っ越しをするために、アルシオ・インターナショナルと契約している賃貸住宅の不動産会社を紹介してもらった。 いろいろ物件を見て回り、最終的に淀川区のワンルームマンションを選んだ。 選んだ理由は、新築の物件だったこと、ただこの1点だけである。 また、インターナショナル堂楽園ホテルを退職するためには、退職願を提出して受理されることが必要である。 坂井琢郎はアルシオ・インターナショナルの採用通知が届いた翌日、統括部長の武田勇に、アルシオ・インターナショナルの副総支配人兼料飲部ディビジョンヘッドのアルベール・ジラルドと面談し、採用が決まったことを伝え、退職願を提出した。 面談した証拠として、アルベール・ジラルドの名刺を添えた。 武田は両腕を組んで、デスクの上にある坂井の退職願を見下ろしていた。 「ホテルマンとして、世界の最高級であるファイブスターのラグジュアリーホテルに採用され

夢見操一
9月14日読了時間: 5分


INTERNATIONAL vol.32
INTERNATIONAL (55) 1997年2月5日 アルシオ・インターナショナルの最終面談を終えた後、坂井琢郎と谷崎准宗は地下鉄御堂筋線を利用して心斎橋へ移動した。 今日の最終面談の打ち上げと称して、繁華街でド派手な豪遊を目論む谷崎は、天下無敵の状態である。 「あっ! これ、どうでしょう?」 谷崎が立ち止まって、店の入口の左側に設置された生け簀を見た。 「えっ・・・」 坂井は目を疑った。 管理が行き届いている生け簀の澄んだ海水の中で、丸みのある円筒形で、胸びれの後ろに白縁を纏った大きな黒い斑紋を持つ魚たちが戯れている。 まさに今が旬という高級魚、トラフグである。 この店は割烹料理店で、フグ料理専門店ではないが、入口の目立つところに旬のトラフグを泳がせて、客引きを目論んでいるようだ。 「こういう店は、予約が必要じゃないのか?」 坂井は谷崎を止める思惑で、そう告げた。 「いえ」 谷崎は即答して、 「予約無しでもいけるって書いてますよ」と、店頭のメニューを確認しながら、笑みを浮かべた。 「マジか・・・」 坂井は、最終面談の打ち

夢見操一
9月13日読了時間: 9分


INTERNATIONAL vol.31
INTERNATIONAL (53) 世間は何かと慌ただしい師走から新年の幕開けへ、その慌ただしさを継承したまま1997年がスタートした。 坂井琢郎もこの流れに乗って、インターナショナル堂楽園ホテルの鉄板焼きの職務に全うしていた。 余計な事は考えず、「何も聞いていない、何も知らない」という姿勢に徹して、1月を乗り切ることが最善の策である。 坂井は自身にそう言い聞かせていた。 先月の12月18日に臨時国会が会期末を迎えた後、年を跨いで数度、辻井元高参議院議員が謎の女性ユキコと同伴で鉄板焼きを訪れた。 坂井琢郎がいつものように対応し、毎度のように辻井の餌食にされる役目を負い、ユキコが大変喜んでいた。 坂井は、ダブルCの鮮やかなレッドのジャケットがよく似合っているユキコの容姿や全体の雰囲気に惹かれるというより、穏やかに飲み込まれていくような感覚が、心地よく感じていた。 鉄板焼きの焼き手たちも、二人の対応に慣れ始めていて、ユキコの素性や二人の関係には触れないという暗黙の了解の下で、会話を楽しんでいる。 主にシェフの窪田誠司が調理して、二

夢見操一
9月4日読了時間: 6分


INTERNATIONAL vol.30
INTERNATIONAL (52) 1996年12月7日 夜 東京の赤坂は、忘年会シーズンの賑わいを象徴する繁華街の如く、大勢の人で溢れていた。 異様な文字が妖艶な彩りで客を惹きつけている通りにある高級料亭の一室では、厚生大臣の大泉純三と自優守護党宮岸派会長の宮岸善正が密会していた。 30分ほど前。 宮岸善正と大泉純三は寸分違わずこの料亭に到着した。 この席を設定したのは、宮岸の方だった。 昨日、宮岸の元秘書で現衆議院議員の住友博史が、堺市学童集団食中毒事件に関する調査資料のデータが保存されているFDを大泉に渡したことが発端である。 そのFDを受け取ったのは、大泉の秘書の八重垣衛で、衆議院予算委員会終了後、事務室に戻ってきた大泉にFDが渡された。 その際に、八重垣は「レッドカード!!!」と伝えた。 八重垣は大泉が戻ってくる前に、すでにFDを開いて内容を確認していて、このFDに保存されている「堺市学童集団食中毒事件に関する調査資料のデータが極めて危険なものだ」と伝えたのである。 大泉が一息ついてから、堺市学童集団食中毒事件に関

夢見操一
7月31日読了時間: 7分


INTERNATIONAL vol.29
INTERNATIONAL (49) 1996年12月6日 この日、国会議事堂の衆議院では、午前9時から予算委員会が行われ、予算委員会の全委員、全国務大臣、さらに、政府委員(各省庁の局長・審議官級の職員)が出席していた。 もちろん厚生大臣の大泉純三も出席している。 自優守護党所属の予算委員会委員の代表者から順に質疑が行われ、正午に午前中の質疑が終了して、現在、1時間の休憩タイムに入っていた。 住友博史は国会議事堂の衆議院の2階にある議員食堂の前で、大泉が出てくるのを待っていた。 住友のジャケットの内ポケットに収められたFDを大泉に渡すことが目的である。 臨時国会が招集されてから中2日、実質的に週明けの月曜日(12月2日)から衆参両院では与野党各々の思惑が交錯する審議の攻防戦が幕を開けた。 そして、この日、堺市学童集団食中毒事件で「犯人扱い」とも受け取れる調査報告を発表した厚生省に対して、「この発表によって甚大な被害を被った」として、カイワレ生産者たちとカイワレ生産関連の組織団体が損害賠償を求めて訴訟を起こしたのだ。...

夢見操一
7月6日読了時間: 7分


INTERNATIONAL vol.28
INTERNATIONAL (48) 1996年11月29日 臨時国会が召集され、衆参両国会議員が国会議事堂に集結した。 開会式の後、衆参両院の本会議にて、阪本竜蔵内閣総理大臣の所信表明演説が行われ、衆参両院ともにこの所信表明の後、直ちに本会議は散会となった。 次回の本会議は、週明けの12月2日で、実質的にこの日が、与野党・各会派の思惑が交錯する攻防戦の幕開けとなる。 自優守護党の聖和会の事務所では、所属メンバーたちが入れ替わり立ち替わり会長の八塚治と挨拶を交わしていた。 去る11月7日の特別国会で、自優守護党総裁の阪本竜蔵が内閣総理大臣に任命され、組閣人事と自優守護党の執行部人事が確定したことを受けて、自優守護党の国会議員たちが、派閥の垣根を越えて、自優守護党の要職に就いた幹部たちに挨拶して回り、表向きの礼儀を通し終えていた。 今日は、聖和会内部だけの形式的な確認作業、この臨時国会と年を跨いでスタートする通常国会に向けて、挨拶がてらに各々の役割とそれに伴う動きなどを確認し共有し合う場が設けられていた。 聖和会所属のメンバーたちは

夢見操一
4月2日読了時間: 7分


INTERNATIONAL vol.27
INTERNATIONAL (47) 1996年11月15日 インターナショナル堂楽園ホテルの鉄板焼きは、憶測と戸惑いが行き場を失い、店内を交錯しながら飛び回っていて、落ち着きのない空気感に包まれていた。 その原因は、20分ほど前に来店した辻井元高が女性と同伴だったことに端を発している。 去る1996年11月8日、坂井琢郎は新聞の記事を見て、辻井元高が新内閣において通商産業政務次官の職を外れたことを知って不安を覚え、複雑な心境でインターナショナル堂楽園ホテルに出勤した。 従業員全員が国会議員の辻井元高のポジションなどを気にしているわけではないが、幹部をはじめ、このホテルと辻井元高の真の関係を知る者たちは、動揺や戸惑いなどで各々の職務に影響がでる可能性もあるだろう。 坂井はそう考えていたが、いざ出勤してみると、従業員たちはいつも通りで、何の変化も見られなかった 坂井は「ちょっと考えすぎたかな」と思い直して、平静を保ちこの一週間を過ごしてきたのである。 だが、まさに今!!! このホテルは騒然とした空気に包まれている。...

夢見操一
3月18日読了時間: 6分


INTERNATIONAL vol.26
INTERNATIONAL (46) 1996年11月8日 昨夜遅くから小雨が降ったり止んだりしていて、どこか重苦しさを感じる朝だった。 坂井琢郎は自宅で出勤支度を整えて、購読の新聞に目を通していた。 一面記事は、昨日発足した第2次阪本竜蔵内閣の組閣人事が大きく取り上げていて、国務大臣と長官の面々の顔写真が並んででいた。 坂井はそんな一面記事を受け流すようにめくって、二面記事を凝視した。 二面では、国務大臣の下に配置される政務次官等の顔ぶれが列挙されている。 「ーーあれっ・・・」 坂井は目を開いて、何度も繰り返してメンバーの顔ぶれを確認している。 「ーー辻井先生の名前が見当たらない・・・」 坂井は首を傾げながらも、またメンバーの顔ぶれを確認した。 坂井が勤務しているインターナショナル堂楽園ホテルの名誉顧問である辻井元高の名前は無かった。 「ーーなんで? これって、どういうこと・・・?」 坂井は一抹の不安を覚えていた。 坂井は、上司でこのホテルの統括部長の武田勇からこのホテルの裏の顔と実態を聞かされてから、とにかくこのホテルか

夢見操一
3月15日読了時間: 4分


INTERNATIONAL vol.25
INTERNATIONAL (45) 1996年11月1日 東京にある自優守護党(ジユウシュゴトウ)の聖和会(ショウワカイ)の事務所では密談が行われていた。 メンバーは、八塚治、小森光喜、大泉純三の3人だけで、聖和会の大御所と称されるほど影響力を誇示していた白川政次郎の姿はない。 なぜなら、白川は今回の衆議院議員解散総選挙で落選してしまい、高齢というファクターも相まって、この先、国政への復帰を目指すのかどうかさえ不透明な状況になり、今回の密談には参加しなかった。 だが、他の聖和会の幹部たちも出席していないとなれば、今回の密談の内容は超極秘レベルなのだろう。 さて、今回の密談は、第二次阪本竜蔵内閣の発足を目前にして、聖和会にとって嫌な問題が浮上していて、その対応を協議するために行われていた。 その嫌な問題とは、来週の11月7日に発足する第二次阪本竜蔵内閣の組閣にも関わるもので、まだ調整段階とは言え、聖和会から八塚が大蔵大臣、大泉が厚生大臣、そして、亀田静夫が建設大臣として入閣が内定しているのだが、第一次阪本竜蔵内閣で通商産業政務次官に

夢見操一
3月10日読了時間: 5分


INTERNATIONAL vol.24
INTERNATIONAL (44) 1996年11月1日 インターナショナル堂楽園ホテルの鉄板焼の手狭な厨房から、「えっ!!!」という大きな声が聞こえてきた。 ワインセラーの前に立っていた坂井琢郎は厨房の方を向いて、「なんかあったのか?」と嫌な空気を感じた。 今はランチタイムが終了して、片付けとディナーの準備を行っている最中で、先ほど統括部長の武田勇に呼び出されて鉄板焼きを離れていた窪田誠司が戻ってきて、川崎紀夫と篠崎啓二、加藤光輝に何やら伝えたようだ。 そのリアクションが「「えっ!!!」である。 坂井はその内容が気になり、耳をすませた。 「ーー黄色ブドウ球菌って、最悪や!!!」 川崎が両腕を組んで言う。 「どっから出たんすか?」 篠崎が窪田に訊ねる。 「まな板から検出されたって、保健所の検査報告書に書いてあった」 窪田が報告書の内容を伝える。 「えっ、まじっすか!?」 篠崎は半信半疑の表情を浮かべて、 「例の集団食中毒事件のあと、衛生管理を徹底しとったでしょ」と首を傾げる。 「でも、出たんやろ・・・」 川崎も不思議そうな

夢見操一
2025年12月28日読了時間: 4分


INTERNATIONAL vol.23
INTERNATIONAL (42) 1996年10月24日 坂井琢郎は梅田2丁目の西阪神ビルを背に大阪中央郵便局を見ていた。 快晴で気温が25度を超える暖かさだが、北東から吹いてくる風が心地よく感じる。 坂井はアルシオ・インターナショナルの開業準備室から出てきたばかりだった。 坂井は、採用試験の第2ステップ、面接試験を終えて、気持ちが軽くなっていた。 以前、面接試験を受けた神戸のホテルと泉佐野のホテル、そして、今回の面接試験は、3社とも同じような内容で、特に緊迫した空気は感じられず、経歴と希望職種に関する話やホテル業界の現状と市場の動向など、第1ステップとは真逆と思える内容だった。 面接試験の担当者は千葉(チバ)と名乗った。体格は坂井の倍以上、ホテルマンとは思えない豪腕格闘技さながらの風格を持っているが、朗らかで温もりを感じさせる雰囲気の男性だった。 坂井はぼんやりと考えていた。 ーーあの第1ステップの電話でのやりとりで、何を審査していたのだろう? 10月下旬なのに夏日、だが北よりの風が心地よくて、物思いにふけるには丁度いい

夢見操一
2025年12月21日読了時間: 8分


INTERNATIONAL vol.22
INTERNATIONAL (41) 1996年10月23日 アルシオ・インターナショナルの採用試験の第1ステップをクリアした坂井琢郎は、第2ステップの面接試験のことで頭が一杯になっていた。 気持ちはすべてアルシオ・インターナショナル!!! と言っても過言ではない。 だが、このことは誰にも話していない。 もし、口を滑らせて、インターナショナル堂楽園ホテルの誰かに話してしまったら、 ほぼ確実に坂井の計画は潰されるだろう!!! 坂井はとにかく逸る気持ちを押さえて、日々の業務を遂行していた。 去る1996年9月27日に衆議院が解散された後、衆議院議員総選挙に向けた各党の動きがメディアで報道されていた。 坂井も以前とは違い、衆議院議員総選挙に意識を向けるようになっていた。 その切っ掛けは、辻井元高の影響だった。 まだこのホテルの裏の顔と正体を知らなかった坂井は、このホテルのVIPゲストの辻井が参議院議員で、しかも現職の通商産業政務次官でもあり、さらに辻井の話題が国政に関わることが多かったことに感化されて、政治や選挙を意識するようにな

夢見操一
2025年12月21日読了時間: 7分


INTERNATIONAL vol.21
INTERNATIONAL (37) 1996年9月26日 住友博史は事務室で菅沼尚人厚生大臣の記者会見を観ていた。 今日、厚生省が発表した堺市学童集団食中毒事件の最終報告に関する記者会見である。 住友は、「一旦、カイワレでカタをつけるってことか・・・」とつぶやいた。 住友は今でも、カイワレは利用されただけで、この真相は羽曳野と朝河グループを狙ったテロ事件だ、と思っている。 住友が作成した調査報告書は菅沼に委ねていたが、その後、住友の調査報告書に関して音沙汰がなく、今、堺市学童集団食中毒事件の真相は、厚生省の最終報告によって、闇に葬られようとしている。 住友は「堺市学童集団食中毒事件に関してよけいなことをするな」と宮岸善正から釘を刺されていて、動きを封じられている状態だった。 住友は、住友自身が作成した調査報告書のことを宮岸に伝えていない。 だが、宮岸から釘を刺された。 そもそも宮岸から住友へ与えられたミッションは、菅沼の動きを監視して、菅沼が自爆するように仕向けることだった。 あろうことか、8月の堺市学童集団食中毒事件の中

夢見操一
2025年12月21日読了時間: 7分


INTERNATIONAL vol.20
INTERNATIONAL (34) 1996年9月3日 月が変わり、坂井琢郎はアルシオ・インターナショナルからのリアクションを待っている状況で、気持ちが落ち着かない日々を送っていた。 鉄板焼きでは、Aカウンターの厨房側の端の席に、一人の男性が座っていた。 坂井がインターナショナル堂楽園ホテルに入社してから、その男性を見たのは初めてだった。 「今日はな、神戸のある物件が手に入ったんや。所有者のババアが頑固でな、時間がかかってもうたのは誤算やったけど、今日、決着がついて、ほんまによかったわ」 その男性が大袈裟に話す。 「そうですか。これでまた青木さんの株があがるんとちゃいます?」と、篠崎が言う。 「ええこというてくれるやん」 青木が嬉しそうな顔をして、 「オレはお宅の社長はんを尊敬しとるんや」と断言した。 ーーああ、そうか。社長についてる地上げ屋ってことか・・・ 坂井は武田勇の話を思い浮かべて、 ーーまあ、どうせ悪戯な事して取り上げた物件だろ! と思った。 坂井は、この青木という地上げ屋のことは篠崎に任せておこう、と思い、他

夢見操一
2025年12月20日読了時間: 9分


INTERNATIONAL vol.19
INTERNATIONAL (32) 1996年8月23日 坂井琢郎が目を覚ました。 頭の中がぼーっとして、記憶も朧気で、昨夜のことが思い出せない。 「ん・・・」 坂井は身体を起こして、ベッドではなくソファーで寝ていたことに気がついた。 昨夜は、帰ってきて、とりあえずソファーに腰を下ろして、 「・・・」 そのまま寝落ちしたようだ。 坂井は時計を見た。 「げっ、もう昼じゃん」 坂井はまずシャワーを浴びて、頭をすっきりさせようと思い、バスルームへ向かう。 身体がフワフワして、力が入ってこない。 坂井は無気力状態だった。 厚手の遮光カーテンを開けて、レースだけにすると、リビングはとても明るい。 坂井はシャワーを浴びて、トランクスだけの姿でソファーに座り、バスタオルで上半身を拭いていた。 リビングの中央にガラスのローテーブルがあり、ローテーブルを挟んでソファーとテレビ台、そして、カラーテレビはブラウン管方式の21型だった。 リビングにあるのはこれだけだった。 リビングとダイニングを仕切る引き戸は全開にしていて、繋がった状態に

夢見操一
2025年12月19日読了時間: 6分
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